UDの思い出

ここ数年の懸案だったノートPCを処分することができた。家電リサイクル法の関係で捨てるには金がかかるのでは?と押し入れにしまっていたのだが、市が主催するリサイクルフェアで無料で引き取ってくれるとのことで、お願いしてきた。

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15年以上前のモデルなので、「ノート」と呼ぶには抵抗がある厚さ。ガンガン(900ページ)と比較しても遜色がない。

UD(United Devices)

かつてUD(United Devices)と呼ばれる分散コンピューティングを利用した、がん研究のプロジェクトに参加していた。僕自身が何かを研究するわけではなく、研究のためにPCの余剰処理能力を貸すというもの。主催であるGrid.orgは貢献度に応じたポイントを付与し、さらにランキングを発表することで競争を促していた。ランキングには個人、国、チームがあり、僕は2ちゃんねるのチーム「Team2ch」の自作版チームに参加していた。

UDをベンチマークにして、オーバークロックなどの改造を施し、PCスペックを競う動きもあったが、スレへの報告から同じ処理量でも高スペックPC1台より低スペックPC2台で処理する方が貢献度が高いことが分かってきた。そこで件のノートPCをヤフオクで落札して、UD解析に充てたのだった。2台合わせても4000円程度で、当時の感覚でも「骨董品」と言える低スペックPCだった。

これはチームの順位を上げるための行為で、本来の趣旨であるがん研究からは外れているが、「やらない善よりやる偽善」がTeam2chのスローガンであり、僕もそれに共感できた。ゲーム感覚で楽しんだ副産物として、がん研究に貢献できればいいじゃないかと。

自作版チーム

自作版チームと言うと、最新パーツを惜しみなく投入した高スペックPCが多そうな印象だが、UDを契機に休眠パーツで1台組んでみるかという人も多く、スレでは最新のテクノロジからレトロなものまで幅広い話題が展開されていて面白かった。

夏になると排熱が問題になる。当時のCPUはクロック数に比例して消費電力や熱量が増加して、熱管理がシビアだった。性能のよいCPUクーラーを載せたり、ケース内の空気の流れを工夫するのだが、最終手段としてはSOTの出番となる。サイドパネルオープンテクノロジーの略で、パソコンの蓋を開けて扇風機の風を当てるだけなのだがw

突然の終了

そんなUDは2007年4月に突然終了した。具体的な理由はわからず、また新薬や論文といった形に残る成果は出ていないが、当時のスパコンでも2500年はかかるとされる解析処理をわずか7年で終わらせ、なにより分散コンピューティングの可能性を示したことに大きな意義があったとか。

UD終了後はBOINCという新たな分散コンピューティングのプロジェクトに加わる人も多かったが、Team2chメンバーのほとんどは解散したようだ。僕もその一人だった。UDの世界ではメンバー数、貢献度、処理時間などすべての面で世界1位で、メンバーは6万人以上いたTeam2chだったが、BOINCでは(現時点でも)1万5千人程度で、貢献度も一時期は世界1位になったようだが、現在は7位まで後退している。

BOINC Team 2ch Wiki

やはり目に見える成果がないと、自分たちが費やしてきたことに意味があったのか自信が持てなくなる人が多かったんじゃないかと思う。また、SNSに人が流れ、2ちゃんねる自体にかつての勢いがないのもあるだろう。

押し入れで眠っていた2台のノートPCを処分したことで、僕のUDも完全に終了した。常にPCのCPU使用率が100%という今考えれば異常な状況だったが、世界1位を目指す熱狂の前では些末なことだった。あのくらい没頭できる何かにまた巡り合いたいものだ。

UD(匿名)

最後のスクショ。実際に参加していたのは3年ぐらいだが、徐々にマシンを増強して最終的な解析時間は7年程に。

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ちなみにTeam2ch全体だと4万年以上に!元気玉のようなプロジェクトだった。

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